チームが上手く失敗するためにマネージャーの私にできること
私は現在、フロントエンドエンジニア5人のチームのマネージャーと、職種混合8人チームのスクラムマスターを担当しています。どちらの役割においても、チームがより自律的で効果的になることを意識して関わっています。
ところで、心配性な私はチームが将来出くわすであろう失敗やトラブルを予測して先回りで対策しようとする傾向にありました。
- この案件は〇〇さんが担当したら苦戦するかもしれないから、△△さんにヘルプはいる準備をしておいてもらおう
- ふりかえりの開催は面倒臭がられるだろうから、自分が開催する役目をしよう
- この人とあの人は相性が悪くて上手く進捗しないだろうから、別々のチームにしよう
実例ではないのですが、例えばこんな感じです。
こういったリスクヘッジや環境整備などは、本の言葉を借りるなら「未来や人間関係の不確実性を減らすこと」と言えそうで、マネージャーの仕事であるように感じていました。
一方で、その不確実性は本当に解消すべきものだったのか? チームが失敗して学ぶチャンスだったのではないか? という不安も感じるようになりました…。この不安を通じて考え方が少し変わったと思うので、自分語りしながら整理してみようと思います。
失敗を恐れているのは誰か
「このままだと上手くいかないかもしれない、問題が起きるかもしれない」という思いは誰かの頭の中で生まれます。それはチームメンバー、マネージャー、もしくは外部の人ということも……。もちろん人により見えてる景色が違うので懸念や不安も違うはずですが、誰かの目線では解決の余地のあること、大した問題でもないことを、心配性の私は勝手に不安がっていた可能性もあるわけです。
この解決策は言うだけなら簡単で、チームで会話して懸念や不安を共有すれば良いですよね。ただ実行するのは難しく……日頃から胸の内をオープンにし合える関係性・コミュニケーションの場を作っておくことが大事だと痛感させられました。
それは失敗じゃない、実績解除だ
失敗を避けていた自分の振る舞いを変えるキッカケとなった発想は、「その失敗は本当にしてはいけない失敗なのか」でした。
私は寝る前に(ひどいときは朝起きてからも)失敗したことを思い返して何がどうダメだったのかを延々考える癖があります。この積み重ねでしか前進できない自覚もあって、私にとって失敗は必要な要素だと認識するようになりました。ということは、もしかしたらチームにとっても失敗する経験は必要なのかもしれません。
そう思ってチームメンバーをかえりみると、各々から「同じ失敗を繰り返さないようにしよう」という意志が感じ取れました。ちゃんと失敗を見つめ返して乗り越えて糧にしようという気概がありました。そうなるとあとは私がチームを信じて、チームに失敗してもらうだけですよね。
そんな尊い行為を失敗なんてネガティブな言葉では呼びたくなくて、実績解除と呼ぶようにしています。
実績解除のあとの展開を予測する
チームが実績解除の積み重ねで前進するようになったとはいえ、起きてはいけない問題もあります。そしてそれを阻止したり回避したりする責任はマネージャーにあるでしょう。
阻止することは難しくないと思っていました。「失敗を予測して阻止する」ことができるなら「失敗の影響範囲や重要度を予測して阻止する」こともできると踏んだわけです。
しかしいざ取り組んでみたら、どこまで挑戦してもらって、どこを未然に防ぐかのバランスを常にとり続ける難しさが待っていました。特に秀でたところのない私にとって「バランス感覚が良いこと」は生存戦略のつもりだったのですが、このバランス取りはすごく難しくて、今でも悩み続けています。
パターンは頼もしくて、脆い
チームが実績解除に挑むのと時を同じくして、私は「チームにとって最適な実績解除をどうやって経験してもらうか」の課題に挑戦し続けることになります。どれほどの難易度の経験をどのタイミングでしてもらうのが良いか、その経験のチャンスはどこに転がっているか…と日々悩み臨んでいるのですが、当然のように毎回失敗をします。
失敗しては別のアプローチをしてまた失敗して…を延々繰り返していれば選択肢も増えるし、うまくいった選択肢はパターンとして自分の中に定着したりもします。パターンを覚えて強くなったと錯覚した日もありました。
少し考えれば気づけたことですが、全く同じ人間はいないので同じパターンが通用することなんてないわけです。パターンを覚えたからといってレベルアップしたわけではないのです。
大事なのは、パターンの使い回しではなく応用です。応用に必要なものは具体策より方針です。つまり、上手くいったアプローチをパターンとして蓄積させる過程では、個別具体的な部分を削ぎ落とし抽象化させていくことも必要なのでした。なんとか言語化までできたパターンの例を挙げてみます。
- 問題が起き得ることに気づいても何もせず、あえて問題を起こさせる。一度経験してしまえば次回は防げるであろう事例で使う
- 特定の問題に目を向けるよう、または集中するよう促す。解決策を試行錯誤する過程で実績解除できるであろう事例で使う
- 自分が取り組む問題に協力してもらえないか聞く。マネージャーが実績解除する姿を追体験させたい事例で使う
いざ言葉にしてみるとパターンと呼ぶには見すぼらしい感じがしますね。それでもこれらを呼吸するように引き出せる状態になれば、一人ひとりの反応を見ることに集中できるようになり、コミュニケーションを洗練させられる気がします。そうなることを目指して、今しばらくはこの脆いパターンを蓄積させていこうと思う次第です。
本音
自分の失敗をふりかえることを通じて失敗の必要性を実感し、チームが実績解除して前進していくことを意識するようになった話でした。
これが今自分にできることだと信じていますが、正直なところ全然自信はなくて、チームが前進しているかどうかも不安です。もっと別の視点や要素があるよ!という方はぜひ@aloerina_まで一言アドバイスをよろしくお願いします。