チームのリーダー、エンジニアリングマネージャー、新入社員のメンターなどの役割をすると、『チームメンバーにどのように仕事を任せるか』と考えることがあります。特にそれなりにスキルがあるチームメンバーに対してこれを考える場合、『どれくらい/どのように裁量を渡すか』がポイントの一つです。

私がEMとしてチームメンバーに仕事を任せるとき『その仕事をどのように進行しどのように完了させるか(何を持って完了とするか)』を決める裁量を渡す方針であり、その旨をチームメンバーに重ね重ね伝えています。

以下はチームメンバーとの実際のコミュニケーション例です。

「あなたが開発案件を担当するとき、仕様に対してどのようにプランナーやデザイナーとすり合わせるか、どう設計しどれだけ実装の風呂敷を広げるか、どのように見積もりどう進行するか、など幅広い裁量があります。

とはいえ、必ずすべてに責任を持てという意味ではありませんし、やり切らないと期待に沿えないという意味でもありません。なるべく広めに裁量を渡すので、その中で自身できるものを選びとりながら仕事を進めてください。分からない部分やできないと感じた部分は自分に投げ返してください。

私は広く裁量を渡す、あなたは一部の裁量を担う/返す、とラリーを重ねながらできることを増やしていったり得意分野を見つけたり、新しいチャレンジをしていきましょう。」

裁量をうまく活用してもらうための工夫

1. チームのフェーズやタスクの期限を考慮する

前提として、チームが締切に追われ続けている自転車操業状態ではこの裁量の渡し方は不可能です。またお願いするタスクの期限が厳密である場合や、満たすべき要件が多い場合にも難しいでしょう。
今までにない広い裁量の中で冷静に選択や決断をしていくためには、仕事を受け取ったチームメンバーが時間と心の余裕を持てていることが大切です。

2. 必要に応じてこちらの期待値を添える

広く裁量を渡すと言っても、一言も口出ししてはいけないということではありません。たとえば「実装方針について自身で考えてみてほしいが、最終的にはチームの合意を得てほしい」と条件をつけることもあります。
また「この前の取り組みを資料にまとめてほしい。どんな構成にすべきか私もまだイメージできていないので、何度かレビューのやり取りが続いてしまうかもしれない」とある程度レビュー回数が多くなることを事前に申し添えることもあります。

裁量を渡されたチームメンバーが、どれだけ自由な選択ができるのか、もしくは何かしらの制約があるのかを理解して仕事に臨める状況をつくることを心がけます。事前にすべてを伝えるのは難しいので条件を後出ししてしまうこともありますが、その可能性を最初に伝えておくだけでも多少良いかもしれません。

3. ペアアサインやチームアサインをする

広い裁量の中で選択や判断を重ねて仕事を完遂することは、人によって難易度の感じ方が違いますし、取り得る選択肢も違います。難しいと感じる人にはいくつかの選択肢やヒントをマネージャーが提案しフォローすることもできますが、私はそれよりも好きな手段があります。裁量をペアやチームに対して渡す方法です。

人により得手不得手が違うので、補い合ったりアイデアを出し合ったりして裁量を存分に活かせるケースが多く、私には思いもよらない素晴らしいアウトプットが出ることもあるので仕事をお願いするときのちょっとした楽しみでもあります。

注意点ですが、あんまり人数が多いと何もしない人を生みかねないので、複数人アサインは2〜3人がベストだと思います。また、チームメンバー同士でうまく相互作用が起きているのは、私たちのチームがこれまでにモブプロやふりかえりなどを重ね複数人でワークすることに慣れていたからかも、と注釈しておきます。複数人での仕事に不慣れなチームだと、誰かがリーダーとなり「仕事を分担する人、言われた通り分担をやる人」の関係になってしまい全員が裁量を発揮できない結果となることも多いです。

おわりに

今となっては当たり前でも、マネージャーになったばかりの頃はどうしていいか見当がつかなかったことが山程あったので、それらを思い返しながら言語化しました。こういった細かいTipsを今後も書いていきたいところです。

マネジメントのやり方はメンバーの数だけ(もしくはそれ以上に)あるので、引き出しの多さはマネージャーのスキルを考える上で重要な要素の一つです。過去の手札をまったく同じように使い回すことは難しくとも、それらを組み合わせたり、それらに着想を得て新しい手段を取ったりできます。自分のためにも手札を見える形で残しておきたい思いがあって書きまとめましたが、新任マネージャーのどなたかのお役に立てれば何よりです。