エンジニア一人ひとりの期待役割がスキルやキャリアにより変化するように、チームも成熟度やフェーズに応じて期待役割が変化します

様々な期待役割を持つチームメンバーの活動が重なり合い生まれる『チームのプロセスや成果がどうあるべきか、がチームの期待役割であると言えます。チームメンバー各々がこれに目を向けることで、より効果的に相互作用し、高い成果を出し、自律的に活動をするチームに近づけます

定期的にふりかえりを実施しているチームであっても、「私たちのチームはどのくらい成熟しているのか?」「私たちのチームは周囲からどのような期待を持たれているのか?」といったことを見つめ直す機会はなかなかありません。

現に私がマネジメントするいくつかのフロントエンドエンジニアチームでも、チームメンバー自身がこれらの問いに向き合う機会はあまりなかったです。

そこでチームの成熟度と期待役割について共通認識をつくるWorkshopを実施しました。今回はその内容の紹介と、Workshop内で読み合わせたCheatSheetを共有します。

CheatSheetの紹介から

まずはCheatSheetの紹介からします。

もともとこれを読み物として各チームに共有するつもりだったのですが、読むだけでは理解がはかどらないと思いWorkshop化した経緯があります。ですのでWorkshopで提供するコンテンツの大部分は以下2つのシートになります。

『チームの成熟度目安』シート

『チームの成熟度目安』シート

『チームの成熟度に応じた期待役割』シート

『チームの成熟度に応じた期待役割』シート

これらを読み合わせた際に生まれる『コミュニケーション』がWorkshopにおける最大の価値となることを意識してWorkshopを設計しました。以下に実際の流れに沿って紹介します。

Workshopの流れ

イントロ

イントロ

本記事の冒頭でも述べたように、『個人の期待役割』だけでなく『チームの期待役割』にも向き合う重要性を伝え、Workshopのゴールをすり合わせます。アイスブレイクが必要であればこの前後でやります。

Step1. 成熟度について知る

Step1. 成熟度について知る

CheatSheetの1枚目を使います。

このシートではチームの成熟度を簡易的に Senior / Middle / Junior の3段階に分けていて、それぞれの成熟度に到達したチームがどのような状態かを表現しています。

あらかじめ用意している内容は薄く、参加者の記入をもってCheatSheetとして完成することを想定しています。たとえば「アウトプットの品質」「ドキュメントの管理状況」「存続期間」「リードタイム」など、様々な観点で成熟度毎の状態を表現できるでしょう。

メンバー自身がディスカッションを通じてこれを完成させることで、一人ひとりが持つ「理想的な成熟チームのイメージ」を言語化し認識を合わせることに役立ちます。

Step2. 成熟度を測る

Step2. 成熟度を測る

成熟度に応じたチームの姿について共通認識を持てたら、次は自分たちのチームの成熟度がどれくらいかを考えていきます。

このWorkshopはmiroを使っていて、左側に配置してる『People』コンポーネント上のユーザーアイコンはドラッグ&ドロップすることができます。「せーの」で数字をいいながら自身のアイコンを右側のエリアにプロットして成熟度の認識を開示し合います。

自分たちの成熟度を考えるとき「〇〇の場面で△△だったから成熟度nだと考えた」のように具体的なエピソードを思い浮かべることが多いと思います。その内容を付箋に書き出し右側のエリアに貼りながら共有し合います。

具体的なエピソードの共有がWorkshopの要で、「どういう行動が称賛されるか」の共通認識づくりに一役買います。チームにジョインして歴の浅いメンバーにとっては、参考事例を追体験できる機会にもなります。

エピソードの共有を踏まえて、チームの成熟度の共通認識をつくれればStep2は完了です。必ずしも1つの数字を決めきらずとも「〇〇な状況では8だけど、△△のときは5」「人によって見え方は違うけど7〜9あたり」といった具合に曖昧さがあっても良いです。重要なのは認識を合わせるために議論したという実績です。

Step3. 期待役割と照らし合わせる

Step3. 期待役割と照らし合わせる

チームの成熟度について共通認識ができたら、最後に成熟度に応じた期待役割を紐解いていきます。CheatSheetでは 『成熟度3段階』×『3つの観点』で期待役割を表現していますが、会社の方針や組織のミッションによって期待役割は変化するので、Workshop開催前にEM等が自組織に合った内容に書き換えておくことをおすすめしています。

Workshop参加者は、自分たちのチームの成熟度に合った行を読み合わせます。シートの各項目の達成状況をマルバツ等で表現しても良いでしょう。

読んでいくと「これはすでにできている」「この行動は意識していなかった」とチームの強み弱みが浮き彫りになってきます。同時にここでも背景にあるエピソードを各自が思い浮かべることになると思うので、付箋に書き出し共有し合います。

次第に「プロダクト開発はSenior相当にできているが、自律性はMiddleレベルに達していない。だから〇〇をしてみよう」と具体的なアクションの議論が始まるかもしれません。もしくはWorkshop後に個々人が「チームの持続可能性を高めるために〇〇に取り組みします」と個人目標に落とし込むこともあります。

こういった行動の変化まで結びつけばWorkshopは120点の出来だったと言えます。

逆にStep1の成熟度に応じたチーム像について何も意見が出ないなど、Workshopのどこかで極端に行き詰まった場合は、「チームメンバーが『チーム』について考える時間を十分に取れていない、チームのモデルケースを見て学ぶ機会がない」と組織課題が浮き彫りになります。

これはこれでWorkshopの成果と言えるでしょう。

おわりに

実際にチームでやってみて手応えを感じたので、今回共有するに至りました。組織やチームに合わせて多少のアレンジは必要かもしれませんが、ぜひいろいろなチームで試していただきたいです。

またWorkshopのアップデートは実践を重ねないとできないので、ぜひ実践後のフィードバックを@aloerina_までいただければと思います。