マネジメントを語るときは具体的で生々しいエピソードを添える
マネジメントの知見を共有すべくブログを書くとき、その1つ1つに具体的なエピソードを添えることを自分ルールにしています。エピソードにはいくつかの条件を設けています。
- 実際に起きた出来事についての具体例を出す場合は、多くの現場であるあるな例であり、読者が「たしかに自分もそうなったことあるなぁ」と実体験に重ねやすいものであること
- 取るべき行動についての具体例を出す場合も、多くの現場であるあるな例であり、読者が「こんな場面に出くわしたら真似してみよう」と実践するイメージを持ちやすいものであること
- 失敗したり恥をかいたりする登場人物は自分だけであること
- エピソードは複数挙げること
ありがたいことに、ブログを書くと「共感しました」「首がもげそうなくらい頷きました」「同じ状況なので参考にします」等の共感系のコメントをもらうことがあるので、多少は功を奏しているのだと思います。
一方で具体事例がミスリードになるケースもあるにはあるにはあるのですが、なるべくシチュエーションの違うエピソードを複数挙げることで、その共通項である話の主題に目が向くよう工夫しています。
それに抽象と具象の行き来はマネジメントに必要なスキルですしね、きっとメリットが勝ると信じています。
さて、ここからはなぜ共感を得ることを意識しているかについて語ろうと思います。私のEMとしての成果や活動の方向性について触れます。
私はマネージャーやスクラムマスターが孤独であることを身をもって知っています。同じ目線で議論やレビューをし合える同僚を社内で見つけることはなかなかに難しいのです。
社外に目を向ければコミュニティはいくらかあるとは思いますが、マネージャーになったばかりで知見が少なくGiverになれない頃(なれる自信がない頃)は、コミュニティに顔を出してTakerとして振る舞うことに心理的抵抗もありました。もちろん新人を歓迎するコミュニティもあるでしょうが、私自身の性格の問題も相まって参加には至りませんでした。
目線の合う仲間が身近に少ないこと以外にも、状況が違うと直面する課題もそれに対するアプローチも全く別のものになるというマネジメント業務の性質も、マネージャーの孤独を加速させます。似た境遇で悩んでいる人を探すのに苦労するわけです。
ですので私は、知見を共有するときには具体的なエピソードを添えて、それに共感してくれる読者の顔(実は身近なマネージャー数名の顔)を想像しながらブログを書いています。
単にTipsやテクニックを伝えるのではなく、どういうシチュエーションで、どういう意思決定のもと実践に至ったのかを、生々しく伝えたいと思っています。
多くの人に響くエモさやSNSを沸かす奇抜さはないですが、極小数の似た境遇にいる読者にとって身近で実践的なブログでありたいのです。
まるで彼らの目の前で実際に試行錯誤する様子を見せるかのように。彼らの壁打ち相手であるかのように。
世界のどこかでがんばるEMの壁打ち相手になりたいと思う背景には、マネジメントの成果は影響力をスケールさせることで示せるという考えがあります。
マネジメントしているエンジニアたちのキャリアが前進し、チームが自律的になり、次のマネージャーが生まれ、チームを引き継ぎ自分は次のチームに向かう。
そうやってチームを渡り歩きながら、マネジメント関係が終わった後も活躍し続けられる人やチームを増やしていくことが、私にとって対外的に見せることのできるマネジメント成果なのです。
もしくはより上位組織のマネジメントにレイヤを移し、複数のマネージャーやチームが生まれる仕組みをつくることでも、私のマネジメントの効力を残すことができるでしょう。
自分のマネジメントの効力をどこまで広げられるか、言い換えれば、良い影響を与えることができた人・チーム・組織をどれだけ残せるかを追求していくことが当面の私のテーマです。
もちろん自組織において今現在期待される役割を疎かにするつもりはありませんが、それを全うすると同時に、自分がチームや組織にいなくてもよい状態に着実に近づけることにも意識を向けているということです。
そしてマネジメント効力は、ブログを通じてモデルケースを見せることによって、自分とは直接関わりのないEMにもほんの少しではありますが届けられるのではと考えています。これが読者の目に生々しく姿を描いてもらえるような具体的エピソードを添える理由でした。
この記事も、たった1人でいいのでどなたかの役に立てれば嬉しい限りです。