"ペイン"と"チャレンジ"に注目して改善サイクルを生み出すふりかえりフレームワーク
KPTを継続していたものの意見が出にくくなったりTryが実行されなくなったり…といったマンネリ化や改善サイクルの停滞はどのチームも1度くらいは体験するのではないでしょうか。そんなときはふりかえりの方法を少し変えて刺激を得ることが有効な手段のひとつです。
新しいふりかえり方法はアジャイルレトロスペクティブズなどから探すこともできますし、もっと自由に、議論したい切り口や進め方を自分たちで考えることもできます。今回は私が関わるチームで実践しているオリジナルの方法を紹介します。
コンセプト
ふりかえり実践イメージ
- やりなれたKPTから大きく変えず、少しだけ変化させてマンネリ解消する方法であること
- チームメンバーが感じる不満やアイデアを集めやすい方法であること
- 次のアクションを可視化し、完了までトラッキングできる仕組みであること
テンプレートの紹介
“ペイン”
今イテレーションで困ったこと、苦労したこと、課題に感じていること
「〜がしんどかった」「〜で困った」「〜は良くないと思う」と主観的な感情に注目して書き出します。根拠や論理はいらず、気持ちを吐き出すことが大事です。
“チャレンジ”
新しく試してみたいこと
ペインに対するアイデアでもいいですし、技術的にチャレンジしたいことでもいいです。エンジニアならエンジニアとしての欲求を、PMならPMとしての欲求を素直に書きます。
“議論中”
ペイン・チャレンジの中から選ばれた深堀りしていくトピック
このテンプレートは毎イテレーションで意見や議論を継ぎ足ししながら使っていくことを想定しています。1度のミーティングで結論が出なかったものや、ふりかえり後に検証や作業をした後に次回のミーティングで継続して議論したいなど、トピック毎の議論のステータスを表現するエリアです。
“アクション”
次のふりかえりまでに実践するアクション
ペインとチャレンジは個人の感情や意欲から意見を集めましたが、アクションはチームで議論ながら出していきます。アクションにはいくつかルールがあります。
- 次回のふりかえりまでに完了できる小さいサイズであること
- 誰が見ても達成したかどうか判断できる具体的な達成基準が書かれていること
この2つを満たすアクションを議論しながら探していきます。アクションはいくつ書き出してもよいですが、このエリアにはもういくつかのルールがあります。
- アクションの完了の責任はチーム全体にある(アサインされた個人ではなく)
- 1イテレーションで着手するアクション数が少なめになるようWIP上限を設ける
- もしアクションが達成できなかった場合は、次のふりかえりで必ずアクションに手を加える
- よりアクションを細かくする
- 個人アサインからペアアサインに変える
- 「イテレーション内で進捗をシェアする」など、アクション達成のためのタスクを追加する
“DONE”
議論が終わったトピック、完了したアクション
このレーンはなくてもよいです。終わったものが山積みになると「これだけ改善行動を起こした」とモチベーションになることがあります。
また1ヶ月おきなど定期的にDONEの内容を見返し、以前との変化を計測したり、新しいチャレンジを見つけるキッカケにするものよさそうです。
ふりかえりの進め方
1. 前回のアクションの達成確認をする(初回はスキップ)
WIPアクションについて1つずつ確認し、終わってればDONEに、終わってなければタスクをアップデートします。
2. ペインとチャレンジを各々が書き出す
5〜10分程度の記入時間を設け、記入が済んだら1件ずつ内容をシェアしながらボードに貼り付けていきます。
シェアする過程で近い意見をグルーピングしたり、過去に挙げたものの解消してしまった意見を破棄したりと、ペインとチャレンジのエリアを整理しながら意見を集めていきます。チームメンバーの感情や欲求を1つのボードに載せ切ることを目指します。
3. 議論して深堀りたいトピックを投票する
議論したいトピックに投票します。今回のミーティングで議論しなかったとしても、次回以降もペインとチャレンジに出ているトピックは(意図的に破棄しない限り)残り続けるので、『今日この場で』話したいものを選びましょう。
4. 投票が多かったトピックを議論しアクションに落とし込む
アクションにはWIP制限があり、多くのアクションが出ても1イテレーションで消化できる数には限りがあるので、多くのトピックについて議論するより1つ1つのトピックについてじっくりめに議論するほうがおすすめです。
アクションエリアにどれくらい未着手アクションが溜まっているかや、1トピックの議論にどれだけ時間がかかるかが、ふりかえりミーティングの長さを決めるヒントになります。最初は1時間枠などで開催し、ミーティングの様子を見ながらアップデートしていくとよいです。
5. アクションの実行者を決める
次のイテレーションで完了させるアクションをWIP上限内で決めます。
アクションごとに人をアサインしてもいいですし、ペアアサインなどにし個人の忙しさに依存しにくい状態を目指してもいいですし、バックログの消化が得意なチームであれば手が空いた人が都度ピックするかたちでもいいです。なんであれ、次のふりかえりミーティングまでにやると決めたものが完了できる方法であればOKです。
まとめ
最後に、チームで使ったテンプレートを置いておきます。
先述のとおり、ふりかえりはKPTにこだわらずもっと自由にやっていいものだと思っているので、これからもチームやプロジェクトに合う方法を探し続けていきたいと思います。それらがどこかで誰かの参考になれば幸いです。